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はじめに
クリーンルームにおいて、各用途の部屋の出入り口となるドアはどのような仕様にし て、どのように配置すべきかといった事項は、基本的にはそのクリーンルームを使われ るユーザー様と設計担当者との打ち合わせで決まってきます。ここでは、過去にお問い合わ せいただいた事例を基に、サンワイズのクリーンルーム用ドアの仕様やドアなどの配置の 仕方について、メーカーとしての考え方を述べております。
1.開きドア
部屋の内外で圧力差がなく、且つそれほどクリーン度を必要としない箇所に使用され るドアは、レバーハンドルや握り玉といった、ラッチ錠を使ったドア(以下「F0系※1」といいます)がよく使用されます。微差圧下においては、ドアを陽圧側に開くように配置す る事により多少の気密性向上を狙う事もありますが、差圧が想定以上となった場合にドア に掛かる圧力が大きくなり、開閉の初動が非常に重くなってしまうので実用性に弊害が出 る場合があります。
このような場合には、陰圧側に開く様に設定すべきですが、掛かりに多少の“あそび”が あるF0系では、圧力がドアの開く側に作用する為に、ドアとパッキンに若干の隙間ができてしまうこともあり、空気が隙間から抜ける風切音が発生する場合があります。また、ド アクローザー等の自閉装置できちんとドアが閉まり切らないという問題も起こり得ます。
これらの問題を回避するためには、グレモン錠を使ったドア(以下「グレモン系」と いいます)を選定することが考えられます。グレモン系は、閉扉した後に人力で締め込 む必要があるため、ドアが閉まりきらないという事態はあり得ませんし、受けとデッド ボルト(かんぬき)には“あそび”がありませんので、風切音も発生しません。使い勝手 上の問題でグレモン系を使用できない場合は、エアロック室を設定するという方法もあ ります。ただし、小規模なエアロック室を設定する場合は、必ず差圧ダンパーを設ける など、閉扉時の室内エアーの逃げ場を用意しないと、ドアクローザー等ではドアが自閉 しない事態が発生するので注意を要します。これは、3方枠であっても、下部にズレゴ ムや後に説明するオートボトムを使う限り起こり得る問題です。
F0系を陽圧側開きにして設置した場合、多少気密性能は上がりますが、ドアをパッキ ンへ強く押し当てる状態が長く続くことによって形状癖が付くため、あまり好ましくあり ません。これを回避する目的でグレモン系にすることも考えられます。グレモン系のパッ キンには、コシが強く癖が付き難いものを使用しているため、形状癖がつくことは皆無で はありませんが、それほどありません。では、F0系にもグレモン系のパッキンを使えば 良いのでは?と思われるかもしれませんが、ドアクローザー等の力でドアを閉める際に は、“コシ”が強いゆえにラッチがかからず、ドアが閉まりきらないなどの問題へとつなが り易いこともあって、F0系とグレモン系で同じパッキンを使用していないのです。
3方枠のドアにおいては、下部にズレゴムを用いて多少の気密性を持たせることがあり ます。サンワイズのドアは、3方枠ズレゴム仕様(ズレタイト)のF0系でもJIS規格 におけるA-3等級※2をクリアしていますが、床面に扇形の傷が付きやすく、摺動によっ て塵埃も多少出るため、クリーン度を重視するのであればオートボトム仕様(ボトムタイ ト)にする方がよろしいでしょう。サンワイズのボトムタイト仕様のドアも、F0系であ ってもA-3等級をクリアしています。ただし、ボトムタイト仕様はボトム装置の構造 上、両端に隙間ができるため、期待するほどの気密性能は出ません。また、気密性能が床 面の不陸に左右される面もあるため、費用対効果の満足度は決して高くありません。サン ワイズでは、床面の不陸に対応するために、床の斫り工事なしで使用できるステンレス製 の沓摺りをオプションとして用意しています。
2.スライドドア
スライドドアに関しては、開きドアのF0系ドアを標準のスライドドア、グレモン系ド アを気密スライドドアとして読み替えることが出来ます。気密スライドドアは、その機構 の特性により閉鎖時にドア自体が自動的に下がるため、オートボトムの設定はありませ ん。ただし、気密スライドドアは3方枠のため、開きドアのオートボトム同様、気密性能 は床面の不陸に左右されます。特に床に勾配がついている場合は、ハンガーレールのスパ ンにおける床面の最高位置を確認し、そこを基準にして水平に設置する必要があります。 そのために、開きドアの中で説明したステンレス製沓摺をオプションとして用意していま すが、勾配の大きい箇所にはあまりお勧めできません。
サンワイズのスライドドアは、戸先をオーバーラップさせ、戸先側にもガイドブロック を使用しています。これは、部屋の内外で多少の圧力差があっても、上部の吊車と下部2点 のガイドブロックでドアをしっかりと支持するためです。しかしながら、気圧差が大きい 箇所にスライドドアを設置する場合は、ドアが閉まるにつれて戸先の下部に気流が集中することになります。そのためにドアが閉まるにつれて戸先が振れてしまい、戸先が開口部に当たってしまう、ドアが戸先側のガイドブロックにうまく納まらないなどの問題が生じ ることがあります。特に自閉式スライドドアでは、ドアが完全に閉まりきる直前でドアが 止まってしまい、完全に閉まりきらないということがあります。このような状況下で自閉 式スライドドアを使用する場合は、差圧ダンパーの設置やガラリを追加することをお勧め します。サンワイズ製のガラリには、交換可能なステンレス防虫網を取り付けることもで きますので、ガラリを設置したことによって虫が侵入しやすくなるといったことはありません。
3.着脱式マシンハッチ
着脱式マシンハッチの場合は、ドアとは異なり通常の出入りには関係がないため、気密性を重視した着脱方向の選定ということについては特段の問題はありません。
使用するユーザー様にとって、どちらからパネルを取り外す方が利便性が高いかで、向きを決めることが出来ます。
ただし、カムラッチハンドルや持ち手ハンドル(以下、総称して「金物」 という)の突起が、クリーンルーム内の気流に影響を及ぼす場合には、金物を室外に向ける等の配慮が必要となります。また、金物の突起が人や台車等の通行の邪魔になる等の問題が生じる場合も同様です。
どうしても両面共に金物の突起が問題となる場合には、金物 の突起を極力なくしたフラットタイプ(商品名:THF40)もあります。フラットタイ プの着脱式マシンハッチは、構造的にはF0系のドアに近い為、着脱方向は気密を重視し たもの、つまり、陽圧側に着脱するように設置する事をお薦めします。
着脱式マシンハッチの仕様には3方枠の設定もありますが、3方枠の場合は着脱するパ ネルがそのまま床に接することになるため、不陸の影響を受けやくなります。そこで下枠 付きの4方枠としつつ、パネル着脱時には下枠も取り外せる仕様とするのが、機能の面で は今のところ最良の選択肢と言えます。
- ※1 F0系:
- サンワイズの開きドアでは、錠前等の締め込みの点数によってF●と呼んでいます。「F0」 とは、締め込み機能のないラッチ系の錠前を使用したものを指します。グレモン錠を使用し たドアの場合、上下方向2点に(3方枠の場合は上部のみ)締め込みのためのロット棒が、ま たデッドボルト(かんぬき)横方向に出るため3点の締め込みということで「F3M」と呼 び、両開きのグレモン錠の場合は、両側のドアにグレモン錠を使用したものを「F4」と呼 んでいます。なお、両開きのグレモン錠のドアでも、子側のドア(普段は開閉しないドア) にグレモン錠を使わないものは「F3M」としています。
- ※2 A-3等級:
- JIS A4702や同A4706の気密性能において、A-4等級に次ぐ、2番目に高い気 密性能の等級。一般的には、A-3等級をクリアする性能を有するものを「セミエアタイ ト」と呼ぶことが多いようです。また、単に枠の全囲にパッキンが回っているドアのことを セミエタタイトドアと呼ぶこともあります。ただし、サンワイズでは、「セミエアタイト」 という名称は、4方枠の開きドアでF0系をセミエアタイトと呼んでいます。
おわりに
ここに記載した事項は、サンワイズドアの商品設計の考え方や、過去に発生した不具合事例を基に、このようにレイアウト設計をしていただけるとありがたいという観点で述べたものです。実際に使用するユーザー様にとって、機能的に満足できて使いやすいドア を、サンワイズはこれからも提供し続けてまいります。